様々な業界へ広がっている動画活用のニーズ
今回は、業界別のニーズの違い、特徴、潮流などについてご説明します。
もともと私自身が外資系IT企業の営業担当者として、動画を使った営業活動の必要性を強く感じたところから当社の動画サービスが始まりました。起業から2〜3年くらいまで、ビジネスの70%は外資系IT企業でした。少人数で全国に対してメッセージを出し続けないといけない外資系の営業担当者にとってセミナーは重要なイベントのひとつです。
準備から莫大な労力が必要となるセミナーですが、実施してしまうと1日で終了してしまいます。このセミナーを再利用できないか・・・参加できなかったお客様や遠方のお客様に対して情報を提供する手段はないか、会社を代表する製品サービスの責任者に対して、気軽に営業同行してもらえる手段はないか・・・そんな発想から「SVP」(Super Visual Presentation)という動画を使ったプレゼンテーションのパッケージサービズを始めました。そういう経緯もあって、様々な表現が可能になった今でも、ヒューマンセントリックスは「動画を使ったプレゼンテーション」のパッケージサービスを提供する動画制作会社という印象が強いようです。
あれから13年が経ち、動画を使ったプレゼンテーションは、国産IT企業、保険金融業、サービス業、教育機関、官公庁、製造業などに展開されています。製品サービスをお持ちで営業活動やセミナー、展示会などを積極的に実施している企業であれば、業種業態に関係なく動画によるプレゼンテーションは有効ということで、様々な業界や業種で必要とされています。
外資系IT企業から、国産IT企業へと広がった動画制作
外資系IT企業にはプレゼンテーションの文化があり、部署や個人に決裁権限もあるので、企業活動に動画を導入するのにとても適している土壌があり、形がなく目に見えないノウハウや作成作業といったものに対する価値も認めてくれる土壌もあったため、動画の活用を積極的に進めていただけました。
一方、国産IT企業(特に大手になればなるほど)は、合議制や社内稟議が煩雑で企業活動への動画の導入自体が難しいという傾向がありました。
10年ほど前でしょうか、プレゼンテーションのための動画撮影をするために、某大手国産IT企業を当社スタジオにご案内いたしました。外資系IT企業の場合は、2〜3名で来ていただくことが多いのですが、某大手国産IT企業は、6〜7名で来社され、付き添いの人たちでスタジオが一杯になってしまいました。そして、スタジオで収録する段になって、一行一行、参加者全員での確認がはじまりなかなか進みません。プレゼンテーターというのは上司や直属の部下といった身近な方を前にすると緊張していく傾向がありますから、この時もプレゼンテーターの方はガチガチに緊張してしまいぎこちないプレゼンテーションとなってしまいました。
動画というのは紙媒体などと違い、一言一句、正しさを追求するものでなく、リズムや熱量から醸し出される楽しさや勢いを伝えるものですから、上司の目の前ではプレゼンテーターの良さが削がれてしまいます。それ以降、事前の調整は本番撮影前に調整していただくようにして、収録の現場では極力参加者を減らしてもらうようにしました。どうしても立ち会いたい人がいた場合は、プレゼンテーターの目線には絶対入らないよう座る場所も指定させていただくようにしました。
このようにプレゼンテーションを行いやすい収録環境を作り、スムーズなプレゼンテーションを行えるようになったこともあり、国産IT企業からの動画制作の依頼が増えていきました。
タブレットで様々な業界へと広がる動画活用
iPadを始めとするタブレットの登場は企業の動画活用にとって追い風となりました。タブレットの特徴は、鮮明な画面と高品質のサウンドを持ち歩けることです。現場で手軽にプレゼンテーションが出来るタブレットが使えるようになり、短い説明動画があれば誰でも効果的なプレゼンテーションが出来る様になったのです。
形のないサービスを説明するのが得意な動画。形のないサービスを展開する保険金融業は、かなり初期から動画制作へ興味をいただいている業界です。ただし、IT企業と違って、大勢の前でプレゼンテーションをする機会があまり多くないということもあり、当初は自社で熱量を持って話せる人が少ないということで消えた案件も多くありました。これらの課題があった保険業界ですが、タブレットの普及やピクトグラムやアニメーションを活用した動画制作も手軽に出来るようになったことから、広く導入が進んでいる業界のひとつになってます。
効率化と質も高めたい教育サービスへの広がり
教育サービスを提供している企業からは、基本的な内容については積極的に動画を使って提供したいというご要望をよくいただきます。インターネットで基本的な知識を得た受講者に集まっていただいてグループワークやロールプレイングなどを行うことで、教育全体を効率的に行いつつ質も高めたいというニーズが教育サービス業界にはあります。ちなみに、官公庁との取引のほとんどは教育での活用です。全国規模の仕組みを作った後、必要になるのは、理解を促すためのコンテンツです。 短い時間で解りやすい動画は教育サービスにとてもマッチしたコンテンツというわけです。
しかし、教育や研修の基本的な知識や情報というのは多岐に渡るため、これらの講座をすべて動画に置き換えるのは時間もコストも相応に大変です。そのため、制作コストを圧倒的に下げ、高品質な教育動画を次々と提供できる動画制作の体制が必要になってきます。全国に向けて展開するような大量の動画制作のリクエストに柔軟かつ迅速な対応をするために、ディレクターやクリエーターはもちろんのこと、最新の機材や自社にスタジオやプロのナレーターを要していつでも効率的に高品質な収録ができる体制を整えてます。
動画配信(ストリーミング配信)が安価になり始めた2012年以降、全国に拠点があるサービス業また、全国に会員企業がいるようなコンソーシアム型の組織より、多くのライブセミナーやオンデマンドセミナーのお話をいただきました。説明会の多くは、東京中心で行われるため、拠点メンバーに対して一律のサービスや同一の情報提供をしたいという理由からです。この頃に、配信と編集を同時に行える機材を導入し、表現豊かなライブセミナーや編集をほとんど必要としない動画制作も可能となり、即時性と訴求力を持つ動画の提供も可能になりました。
また、基本的な講座を全て動画にするのは時間もコストもかかるため、教室の一部を簡易デジタルスタジオにして動画制作を自社での内製化したいという声も頂きます。このような企業については、スタジオ設計から効率的に収録が行える機材の選定、動画の撮影から制作スタッフの手配までを全て含めて積極的に対応しています。
[RELATED_POSTS]
動画のニーズがあまりなかった製造業への広がり
4〜5年前であれば、動画のニーズがあまりなかった製造業のお客様へも最近は展示会などで積極的に活用いただけるようになりました。
手に取って見ればすぐにわかる製品に対して、動画は手にとっても見えないポイントを表現できます。開発者や制作者のこだわり、最新鋭の工場ラインを動画でお伝えします。工場の多くが海外に移転されているような場合、施設はもちろんのこと、そこで働いている人々の様子をその場で確認できる動画は真剣に検討しているお客様にとって安心感につながります。
製品サービスを支えている技術・施設・情熱・想い・人を効果的に表現することで、付加価値の向上につながります。
また、職人の高齢化問題から、最近では職人の技術をどのように継承していくかという課題を動画で解決しようという動きもあります。細部の表現が難しく、ページ数も莫大になってしまう紙のマニュアルに代わって動画の活用が進んでいます。外国人労働者も多くなった現場において、見て分かる動画マニュアルは特に重宝いただいています。
動画制作に必要な、事前のインタビューや絵コンテを作ったりする時間とコストもない場合はディレクターとカメラマンを現場に派遣させていただいてます。現場の職人さんと人間関係を築きながら、会話の中でイメージを固め、撮影し編集していきます。現場で次々に動画マニュアルが出来ていくイメージです。
伝統工芸の良さを伝える動画の力
最後に余談となりますが、伝統工芸のお話を加えます。
山形伝統工芸品振興会の依頼で和傘職人さんの製作工程を動画にしました。和傘というのは2万円前後で、3,000〜5,000円の洋傘に比べて大変高価なものです。
それでも、繊細で丁寧な製作工程の動画をみた多くの人より「2万円でも高く感じない」という声をいただきました。モノづくりにかける「情熱」「伝統」という見えないものを表現できる動画の力を感じた瞬間でした。
知識や固定概念がもともとなかったことの強み
前のコラムでも触れたように、動画制作はこうあるべきだという知識や固定概念がもともとなかったところがヒューマンセントリックスの強みです。
業界それぞれの課題に対して、どう対応していくかを素直に柔軟に対応することで、業種業態に囚われない動画制作サービスを作ることが出来たと感じています。動画制作に関する価格の考え方も独特のものになっていると思います。
ヒューマンセントリックスが提唱する「3つの価格領域」については、次回コラムでご説明します。
- トピック:
- 連載コラム
- 関連キーワード:
- hcx