これまでマニュアルというと、文字をベースとした冊子形式が中心でした。しかし、使いやすく高性能な制作機材が、安価で普及するにつれ、動画マニュアルを作成する企業も増えてきました。今日では、社員向けの研修資料や、顧客向けの取扱説明書の代わりとして、さまざまな動画マニュアルが作成されています。
この記事では動画マニュアルのメリット、種類や製作手順を紹介。加えて、テロップなどを用いた上手な動画の作り方なども解説します。今後動画マニュアルの導入を検討している企業担当者の方、また個人事業主の方も、ぜひ参考にしてください。
動画マニュアルの特徴とは?
これまでマニュアルは、紙媒体が主流であり、デジタルであってもPDFなどの、文字情報が主体のものでした。しかし最近は、文字よりも効率的に内容を理解させてくれる、動画マニュアルが注目されています。
動画マニュアルのメリットとしてまず挙げられるのは、写真と文字だけの説明ではわかりづらい複雑な工程も、テレビを観るような感覚でスムーズに頭に入ることです。最近は活字離れが進み、分厚い冊子に目を通すのが苦痛になる人もいます。動画マニュアルが注目を浴びるのは、そうした時代の必然と言えるかもしれません。加えて、企業側にとっては、印刷コストや教育人員コストの削減も望めるという利点もあります。
一方デメリットとしては、動画を再生する場所が必要だったり、製作コストがかかったりすることなどが考えられます。しかし現在ではスマートフォンやタブレットなどで、どこからでも動画サイトにアクセスできる上、動画編集に関しても、アプリやソフトを用いることで簡単可能です。
こうした理由により、動画マニュアルは今後さらに、私たちの生活に欠かせないものとなっていくと期待されています。
動画マニュアルの種類
一口に「動画マニュアル」と言っても、製品の操作説明動画から研修用の教育動画まで、さまざまな種類があります。以下に詳しく解説します。
業務手順のマニュアル
業務手順を説明するためのマニュアルは、多くの企業で作成されています。これらを動画として作成しておくと、より短時間で業務の流れや全体像、実際の作業手順、などを社員に理解させられるでしょう。移動の多い部署などに動画マニュアルを準備しておけば、引き継ぎ業務などの効率化が狙えます。
また、指導担当者の負担軽減も望めます。そのため、各社員が、自分の仕事に専念しやすくなり、企業全体の業務遂行力も高まるでしょう。
営業サービスのマニュアル
営業マニュアルは営業職のノウハウを可視化したもので、「セールスマニュアル」とも呼ばれています。
営業職は製造業のように明確な手順がなく、個々の経験によりノウハウを培っていくので、マニュアル化しにくい職種です。しかし、セールスに必要なリサーチ・準備・有効なアプローチ方法、といった基礎的なプロセスを動画マニュアル化することで、社員の間でセールスのコツを共有しやすくなるでしょう。
また、そういった動画を新人研修に導入することで、実践的な要点を視覚的に繰り返し伝えられるようになります。実務を通しての研修(OJT)などと併用すれば、より効果が高まるでしょう。
研修のためのマニュアル
企業の慢性的な人員不足が問題視される中、社員研修において動画マニュアルが活用されることが多くなっています。特に新入社員を対象とした社内ルールやビジネスマナーなど、最低限のことを短時間で覚えてほしいときに適したツールです。
またベテラン社員向けの、新人教育方法についてのマニュアル(指導マニュアル)や、店長クラス向けの「店舗運営マニュアル」なども動画化しておくと有効です。このように、幅広い勤続年数や職位の社員にとっても、動画マニュアルは有用です。もちろん企業にとっても、講師を雇うコストや教育に割く人員を削減できるといったメリットは大きいでしょう。
製品の説明マニュアル
従来、多様な機能を搭載していたり、操作方法が複雑だったりする製品を販売するなら、分厚い紙のマニュアルを添付する必要がありました。しかし最近は、チュートリアル形式の動画マニュアルを添付することも多くなってきています。DVDなどを添付する以外に、オンラインマニュアルのURLを記載している企業も増えています。
紙のマニュアルは1色刷りが多いため、それを読むユーザーにとって、どの部分にどんな操作を行えばいいのか、具体的にわかりにくい場合もあります。動画なら、実際の操作を一連の動きとして確認してもらえます。ユーザーは、わからないところを部分的に繰り返し再生するなど、自分に合った方法で学ぶことができるでしょう。
また、ソフトウェアのように物理的な製品でないものについては、動画マニュアルをWeb上で積極的に配信する企業が多いです。
社員教育の動画マニュアルを作成する手順
動画マニュアルを製作したい場合、どのような手順で行えばいいのでしょうか。以下に具体的な製作手順を紹介します。
課題を明確化して情報を収集する
効果的な動画マニュアルを作成するためには、情報がわかりやすく整理されていなければなりません。まずは動画と紙の異なる特性について理解し、動画の利点を生かすにはどのようにアプローチすればよいのか、しっかり方向性を定めましょう。その上で記載すべき情報の取捨選択を行い、台本作りに備えます。
伝えたいポイントを整理して台本を作成する
動画を作成する上で、全体の流れを決める台本作りはたいへん重要です。台本はテキストでも絵コンテでも構いませんが、動画の尺が決まっている場合は、各シーンの再生時間を考慮しながら構成を組み立てていきます。
動画マニュアルは何も工夫がないと、同じような場面が続いてしまい、冗長になりがちです。それを避けるためには、テロップやナレーション、資料映像やインタビュー映像などを挟み、メリハリを付けるようにしましょう。
動画を撮影、ナレーションなどの録音をする
台本が完成したら、いよいよ具体的に撮影や録音を進めていきます。機材の準備をしたり周囲の環境を整えたりする必要があるので、余裕のあるスケジュールで取り組みましょう。
撮影の際は、観る側の立場を考慮することが大切です。例えば同じシーンでもアングルを変更したり、ズームを調節したりすることで、より細かな部分まで伝わりやすくなります。
また、撮影場所にも気を配る必要があります。雑音が入っていたり、背景に余計な要素が映り込んでいたりする動画では、内容を伝えきれない可能性があります。
加えて、照明にもこだわりたいところです。人物に対して、蛍光灯の光ではなく、撮影用の照明器具やレフ版を効果的に使うことで、奥行きのある映像が撮影できます。
ナレーション用の声は、よりクリアな音質で録音する必要があります。マイクを使用することはもちろん、可能なら専用の録音スペースを借りるほうがよいでしょう。
編集をする
次に撮った動画や音声を編集します。作業手順マニュアルなどの動画は、単調になりがちなので、なるべく不要な部分は落とし、簡潔にテンポよくつなぐ必要があります。
編集し終わった動画は、必ず複数人でチェックしましょう。初見の人には理解しにくい構成になっているかもしれませんので、編集に携わっていない人にも見てもらうことが重要です。話の流れにわかりづらいところはないか、音にノイズが入っていないかなど、細かい部分も厳しく確認しましょう。
研修動画を上手に作成するためのコツ
わかりやすい動画マニュアルを作成するには、いくつかポイントがあります。
動画作成初心者の人でも簡単に使えるテクニックとしておすすめなのが、テロップです。人物の話す事柄と同じ内容のテロップを出すことも有効です。音声は環境によっては正しく聞き取れない場合もあります。そこで、テロップにより文字情報を併せて伝えることで、正確に情報を理解してもらえるのです。
また、資料を表示するときは、矢印やハイライトを用いて見やすくなるように工夫しましょう。そうすることで動画全体にも緩急ができ、より理解しやすいマニュアルになります。
動画マニュアルの事例
では、実際にどのような動画マニュアルがつくられているのか、具体的なサンプルを見てみましょう。
まずは液晶モニターなどを製造・販売する「ベンキュージャパン」による、「液晶ディスプレイの組み立て方」動画です。アングルやズームを変えたり、テロップで説明を加えたりすることで、組み立て作業の手順がわかりやすくなっています。全体で1分半と短めにまとめられているのもポイントです。
また、総合エレクトロニクスメーカー「富士通」が提供する「仮想デスクトップサービスV-DaaS」の活用デモ動画では、退屈になりがちなデスクトップの操作説明を、ハイライトや赤枠を用いることで飽きさせない構成で提示しています。
これらの動画は、以下のURLから実際に視聴できますので、ぜひ参考にしてください。
https://www.humancentrix.com/services/howto-manual-movie
なお、例えば「tebiki(テビキ)」など、無料でダウンロード可能な動画マニュアル作成ツールも存在します。こちらは、スマートフォンで撮影した動画を、自動で英語などへ翻訳し、字幕を追加する機能を搭載しています。インターネット上には、ほかにもさまざまな動画作成ツールがありますので、自社にあったものを探してみてください。
まとめ
近年では、スマートフォンで高解像度の動画撮影・編集が可能となってきたこともあり、自社内で動画マニュアルを製作する企業は増えています。
ただ、ノウハウのない状態で自作する場合、どうしても動画としてのクオリティは上げづらいでしょう。動画製作会社に依頼すれば、コストはかかりますが、的確に要望に沿った動画マニュアルが作成できます。また、普段は自社で動画作成を行い、ノウハウを蓄積しつつ、特に重要な動画だけは専門の製作会社へ依頼する、という方法も有効でしょう。
「ヒューマンセントリックス」は、教育研修用や製品・サービス動画をはじめ、さまざまな動画マニュアルを、多くの企業向けに手がけています。プロならではの技術力と構成力を活かした動画マニュアルをご希望の場合は、ぜひご用命ください。
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