今ご覧いただいている画面から少しだけ周囲に目を向けるだけで、さまざまな色彩が目に飛び込んできます。赤、青、黄色、茶、黒、それぞれの色が、なぜその色なのかを考えたことはあるでしょうか?実は、色というのは私たち人の心に働きかける影響が非常に強く、どんな色に囲まれているかでその人の性格が決まると言っても過言ではありません。そして、色が与える影響について研究する分野を色彩心理学と呼びます。
本記事では、動画制作へ取り組むにあたって知っておいたほうが良い色彩心理学をざっくりとご紹介します。普段何気なく目に飛び込んでくる色も、その特徴を知るだけで今までとはまったく違った見方ができるはずです。また、色彩心理学を知ることでユーザーに特定の行動を促すような効果的な動画制作が可能になります。それでは、色彩の世界に飛び込んでみましょう。
色が私たちに与える影響
色が人に与える影響は強く、そしてその領域は広範囲に及びます。私たちが自分自身で決定している事柄の中には、無意識のうちに色の影響を受けている場合もあるのです。では、色にはどのような影響力があるのでしょうか?
1. 神経系に与える影響
人が色を認識するためには錐体細胞(すいたいさいぼう)という細胞が働いており、赤錐体/青錐体/緑錐体の3種類が存在します。各錐体は色ごとの波長範囲の光に最も反応するたんぱく質を保有しています。例えば、人がトマトを見た時に「赤い」と感じるのは、赤い錐体が強く反応しているからです。錐体細胞は赤/青/緑に限らず、これら3色のセンサーがあることで強度の組み合わせ次第でさまざまな色を見ることができます。
このように、人は錐体細胞によって色を認識しているわけですから、細胞と神経系との繋がりを考えると色が神経系に与える影響は大きいと考えることが自然です。赤は交感神経を刺激し、血圧を上げる働きがあります。逆に青や新緑の色は副交感神経を優位にして心身をリラックスさせる効果があります。
この他にも黄色を見るとハッピーな気持ちになる、紫は想像力・想像力を促進させるなどいずれの色も何らかの影響を神経系に与えます。
2. 文化面に与える影響
色というのは、文化を通じてそのイメージが形成されてきたことも関係し、色を見た時の心理に強い影響を与えます。例えば、西洋文化において黒は死を象徴するのに対し、東洋文化では白が死を象徴するとされています。このため、日本人が黒を見て不安感にかられるようなことは少ないでしょうが、西洋人からすれば不快に感じる色かもしれません。先日、米国の友人が、アメリカ人は黒いものを食べないといったことも印象的でした(真実は定かではありません)。
ただし、この感覚は必ずしも共通のものではありません。黒をこよなく愛する西洋人もいるでしょうし、黒を見て不安感を覚える日本人もいます。色が文化面に与える影響は大きいものの、世間一般のイメージはあくまで汎用的なものと理解しておくことが大切です。
それぞれの色の働き
それでは、色ごとに人に神経系やイメージに作用する働きについて1つ1つ確認していきましょう。
青(ブルー系)
- 精神を鎮静化し安定させる
- 集中力を増進させる
- 解毒、殺菌作用がある
- 催眠効果がある
- 内分泌系(ホルモン等)の働きを鎮静させる
- 発汗を抑える作用がある
- 冷静、落ち着きのあるイメージ
赤(レッド系)
- アドレナリンの分泌を促す
- 心拍数を上昇させる
- 新陳代謝を促進する
- 交感神経を刺激し緊張状態にする
- 食欲を増進させる
- 元気、活発なイメージ
黄(イエロー系)
- うつ・精神衰弱に効果がある
- リンパ系を刺激して身体の機能を高める
- 消化器系のはたきを促進し消化不良などに効く
- 見かけよりも軽いイメージ
緑(グリーン系)
- ストレスを減少させる
- 副交感神経を優位にしてリラックスさせる
- 鎮静作用、鎮痛作用、緊張緩和、催眠作用がある
- 解毒、殺菌作用がある(森林浴効果)
- 眼を休める働き(アイレスとグリーン)
- 紫(パープル系)
- 血圧・脈拍を低下させる
- 想像力・創造力を促進させる
- 治癒効果がある
- 不安・ストレスを蓄積させる
- 高貴・エレガントなイメージ
橙(オレンジ系)
- 食欲不振を回復させる
- 筋肉痛、しびれ、胃潰瘍の症状を和らげる
- 内分泌を活性化する
- 健康的、躍動感がある、にぎやかなイメージ
茶(ブラウン系)
- 心身ともにリラックスさせる
- 安心感と安定感を覚える
- 赤・黄色の特徴を兼ね備えたイメージ
白(ホワイト系)
- 緊張感・警戒心を増進させる
- 長時間見ると眼球が披露する
- 長時間見ると不安感にかられる
- 重量を軽くかんじさせる
- さわやか・清潔なイメージ
黒(ブラック系)
- 自信を与える
- モノが締まって見える
- 強い意志が伝わる
- 重量を重く感じさせる
- 見ていて疲れにくい
- シックなイメージ
灰(グレー系)
- エネルギーを低下させる
- 脳機能を低下させる
- 対人ストレスを和らげる
- 地味なイメージ
以上のように、色ごとに神経系に働きかける効果が違います。一部では矛盾している働きがあるようにも感じられますが、色というのはどういう状況でその色を見るかによっても大きく異なります。
例えばハリウッドスターが真っ白なシャツを着ていると非常に爽やかなイメージを与えますが、幽霊の白は他の色に比べて恐怖感が増します。このため、色は時に真逆の働きをすることがあるのです。
どうやって色を動画に採り入れるのか?
ここまで色の効果についてご紹介しましたが、肝心なのはそれらの色をどうやって動画に採り入れるかです。あれもこれもとさまざまな色を使えばよいわけではなく、動画の目的に応じて適切な色と配色があります。
まず大切なのは動画コンセプトを固めることです。一口に動画といっても、コンバージョン促進が目的なのかブランドイメージ向上が目的なのかによって、どのような動画へ仕上げるかが変わります。同時に、どの色を使えばよいかも変わるのです。これから制作しようとしている動画は何を目的にしているでしょうか?実は目的が不明確な場合も多いため、改めてコンセプトを固めることをおすすめします。
そして、色を動画に採り入れる際のポイントはたった1つ、配色黄金比を守ることです。皆さんが普段目にしている広告、商品ロゴデザイン、洋服コーディネートなどの多くは配色黄金比に則って色が決められています。その黄金比とは「70:25:5」です
これはベースカラーを70%とした時、メインカラーを25%、アクセントカラーを5%にする比率であり、すべてのクリエイティブコンテンツに適用できる配色黄金比となっています。商品カタログデザインや写真と違い、動画には動きがあるためこの比率を守ることが難しいと考える方も多いですが、配色黄金比を少し意識するだけでも動画から得られる印象がグッと良くなります。
この配色黄金比は色彩心理学にのっとって決められているものなので、人が最も心地よく馴染みやすい配色比率なのです。動画制作をする際は、本記事でご紹介した色ごとの特徴を十分に理解した上で、この黄金配色比を意識して制作にあたってみてください。そうすれば、ビジネス付加価値を大きくするような動画がきっと制作できるはずです。
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