長期的に企業の業績を上げるためには、ユーザーとの適切なコミュニケーションが大切です。このコミュニケーションを最適化するために必要不可欠な設計が、コミュニケーション設計です。この記事では、コミュニケーション設計の意味から、実際に設計する際の方法まで詳しく説明するので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
コミュニケーション設計とは
コミュニケーション設計は、「顧客に進んでほしい道筋」をあらかじめ設計しておく取り組みです。具体的には、「顧客に期待通りの行動を取ってもらうために、事前にプロセスやストーリーを考えておく」という、1つのマーケティング戦略です。
コミュニケーション設計を行うには、「コミュニケーションの開始からゴールに至るまでの道筋」を事前に予測する必要があります。そのため、顧客に対する理解が必要不可欠になります。このコミュニケーション設計をしっかりとしておけば、企業が望むべき方向性を効率化できることになります。
今までの手法では、顧客に対して大規模なキャンペーンを設定するなど施策が単発になる傾向がありました。しかし、コミュニケーション設計をしっかりと実施しておけばより効率的に目標を達成できるようになります。各顧客に届けるべき情報の内容や、情報を届けるべきタイミングや受け皿も、よく吟味していくとよいでしょう。
コミュニケーション設計の重要性
コミュニケーション設計では、「顧客の状況や行動がどこから沸き起こっているのか」を考えます。単なるニーズというより、そうした具体的なニーズを生じさせている、顧客自身も意識していないような根底的な要素を考えるのです。こうした要素について、顧客インサイトという言葉が使われます。
コミュニケーション設計が目指すのは、単発的な売上向上ではなく、上記のような顧客インサイトに根差した、長期的に有効な顧客との関係性構築です。
特に顧客との距離が近い企業では、顧客インサイトを考えることは重要です。顧客一人ひとりに合った提案ができれば、成約率も向上するでしょう。「自身の利益に直結する提案をしてくれる企業」として自社を認識してもらえれば、よりよい関係を長期的に築くことへつながります。
このようにコミュニケーション設計では、顧客との関係構築をなすことで、自社自体やブランドのファンになってもらうことを目標としています。あくまでこの関係構築をベースとして、顧客に消費活動を継続してもらい、長期的に収益を計上していく、というパースペクティブで行うのがコミュニケーション設計です。
コミュニケーション設計の立て方
実際にコミュニケーション設計を立てる際は、「認知・興味喚起に始まり、情報収集と比較検討を経て、購買に至る」といった購買プロセスごとに、働きかけるコミュニケーションの例を書き出していきます。その際、どのチャンネルやどんなメディアで、そうしたコミュニケーションを実行するのかもきちんと意識し記載しましょう。
その内容を足掛かりとして、「どのようにコミュニケーションを組み立てれば、うまくゴールに到達するのか」という考えを深めながら、具体的な内容を設計していきます。以降では、各購買プロセスで一般的に設計すべきとされる、コミュニケーション例を説明していきます。
認知・興味喚起
まず、商材への興味を持ってもらう代表的な方法として、オウンドメディアや各種SNSを利用して「お悩み相談」などの企画を行うことや、「日常的な業務についてのお役立ち情報」などをコンスタントに提供し続ける方法が挙げられます。
これらと併せて、特にBtoBであれば「どのような理由で、どんな顧客の利益になるか」という点を強調して、商材紹介を盛り込みます。ここで自社と付き合うメリットを実感した顧客は、スムーズに次のステップへ進んでくれるでしょう。その際には顧客とのタッチポイントも設置することが必要不可欠です。
情報収集
興味喚起された顧客は、自社商品・サービスの詳細について、情報収集を行い始めます。こちらからは、コミュニケーションを通して具体的な情報提供を行いつつ、メルマガ登録などを促しましょう。コミュニケーションを取り続け、切れ目が生じないようにすることが大切です。
比較検討
顧客は、自社商材を購入するか判断する際、競合他社の関連・類似商材と比較して検討します。ここでは、「自社商材を導入した場合の成功実例」をメルマガで配信したり、自社商材が他社商材との間で持っている差異を強調してお知らせしたりするとよいでしょう。顧客からのお問い合わせ対応に取りこぼしがないよう、随時フローも確認してください。これを徹底することで、購入行動へ導きます。
購買
無事に購入してもらえたなら、商材の基本的な活用方法を紹介する内容など、フォローメールを欠かさず送信します。大事なことは、「購入後」も企業への好感度を維持してもらえるようなコミュニケーションを継続することです。購入後に役立つアイディアを紹介したり、顧客企業の抱える課題解決への具体的提案を提示したりして、アプローチを続けていきましょう。
コミュニケーション設計には“3つの価値”を入れ込むことが重要
コミュニケーション設計時には、経済的なメリットを感じる「金銭的価値」、快適感や有益性を感じる「利便的価値」、精神的満足を感じる「情緒的価値」と呼ばれる3つの価値をバランスよく入れ込んで、プロセスを組み立てることが大切です。
顧客の状況に合わせて、「3要素のどれに力を入れるのか」は随時調整していきます。すべて同じパワーバランスで入れ込むケースや、1つに注力するケースもあります。
例えば「金銭的価値」を重視する顧客であれば、導入コストを下げられる提案をコミュニケーション内容に含めるのはもちろん効果的です。さらに「ランニングコストも含めた総額を考えると割安になる」といった具体的な提案まで行えるよう、コミュニケーションを取っていきます。
また、担当者が定期的に該当顧客に接触し、顧客状況を把握することも重要です。これを通して、適切な提案を行えってくれる企業として認識してもらえば、顧客の抱く「利便的価値」を向上させるでしょう。
なお、サービスの飽和状態が続いている昨今は、「情緒的価値」の充実度によって売上が大きく変化してくると言われています。同業他社とどう差別化していくかを考えながら、顧客の目から見て魅力的に映るサービス提供を目指してください。
コミュニケーション設計を立てるメリット
実際にコミュニケーション設計を立てて業務を行った場合、いったいどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的なメリットを3つ紹介します。
施策に一貫性が出る
複数のチャネルを運用している企業では、チャネルごとに担当者が異なります。そのため、施策実行にどうしても一貫性を担保しづらくなるでしょう。そこで、コミュニケーション設計をしっかりと1つ立てておくと、各チャンネルで一貫したアプローチを行えるようになるので、機会損失の軽減につながります。
例えば、「オウンドメディアではビジネス性の強いコンテンツを提供しているのに対して、SNS上ではフランクな投稿を繰り返している」というケースを、顧客目線で考えてみましょう。雰囲気に一貫性を感じられないと製品やサービスに対する信頼感が生まれず、逆に企業やブランドに対して曖昧で不真面目なイメージを持つ傾向が強くなる恐れすらあります。逆に企業全体で統一された雰囲気やイメージを設計しておけば、顧客への訴求力を高めることができます。
目標が明確になる
すべての施策に一貫性が出ると、各チャネルの目標も決まっていきます。各チャンネルが、「どのニーズに働きかけて、どんな結果を目標としているのか」が明確になり、担当スタッフも自分の役割を把握しやすくなります。
また目標が明確な分だけ、効果測定もしやすくなります。信頼性の高いデータを基にすれば、各メディア・チャンネルにおける施策改善策も円滑に立案可能です。
そうした環境が整うにつれて、各担当スタッフも自分の業務について着地点が明瞭に見えてきます。そのため、スタッフ一人ひとりが、やりがいやモチベーションを高い水準に維持してくれるようになり、各部署全体での業務効率化につながっていくでしょう。
データを蓄積し改善できる
顧客の反応をチャンネルごとに保存することで、細分化された顧客データとして蓄積していけます。そのデータを社内全体で共有しておけば、さまざまな施策へ活用できるでしょう。
例えば、「特定の理由で購買につながらなかったケース」を効率的に収集して参照することで、その改善策を具体的でスムーズに議論可能です。
また顧客個人に寄り添う、パーソナライズ化された支援も提供可能です。これは持続的な情緒的価値の向上にもつながります。
こうした顧客データ収集と活用を積極的に見越して、コミュニケーション設計を進めていってください。
まとめ
顧客インサイトを考え、それを基にしたコミュニケーション設計を行うことは、マーケティング業務の効率化や長期的な売上アップに結びつけられます。また、コミュニケーション設計を完了しておくことで、複数のチャネルをまたがっても一貫性のある対応が実現したり、データ分析の精度・効率が上昇したりと、多くのメリットがあります。顧客への適切なアプローチ方法がわからない場合や、リピーター率の改善を試みる場合、まずは顧客とのコミュニケーションについて理想的なストーリーを立てることから、着手してみてはいかがでしょうか。
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