「MR」「AR」「VR」。いずれも近年のビジネス界でよく耳にする言葉ですが、具体的に何のことを指しているのか分からない、という方に向けて本稿ではMRを中心に3つの技術について解説します。すでに活用が始まっているARとVRに比べて、MRはこれからの発展が期待されている技術です。それぞれの違いや特徴を理解し、ビジネスにどういった影響があるのかを考えてみましょう。
MRとは?AR・VRとの違い
それでは、MRとは何かを知っていただくために、AR・VR・MRの順にそれぞれの概要を解説していきます。
AR(Augmented Reality)
日本語では「拡張現実」と訳されるARは、スマートフォンやタブレット、カメラに映し出される映像を通じて、現実世界のデジタル映像を投影する技術です。2016年に流行し今でも社会問題になっている「ポケモンGO」がAR技術を使った代表例です。このゲームはスマートフォンカメラを通じてポケモンを現実世界に投影し、ポケモンの世界を疑似体験できます。
VR(Virtual Reality)
日本語では「仮想現実」と訳されます。主にヘッドマウントディスプレイと呼ばれる専用機器を、視界全体を覆うように装着し、目の前に映し出されるデジタル映像の中に入り込んだような体験ができる技術です。このVRを使った代表的な商品・サービスもやはりゲームであり、SONYが製造販売しているPlayStation VRは世界的にも人気です。
MR(Mixed Reality)
では、MRとは何か?MRは日本語で「複合現実」と訳され、現実世界と仮想現実を組み合わせる技術です。たとえば現実世界に仮想世界の情報やCGなどを取り込んで、ARのように単純に現実世界へデジタル映像を投影するのではなく、現実世界の中に仮想世界の情報や映像が「まさにそこにあるように」存在させるのがMRです。具体的な例を挙げますと、Microsoftが開発したホロ・レンズが代表格と言えます。
ホロ・レンズもヘッドマウントディスプレイのような専用機器を使用するので、一見VRのように思えます。しかし、その専用機器はメガネのようにレンズが半透明になっており、これを通じて仮想世界の情報や映像を操作することができます。
以上のように、AR・VR・MRはそれぞれ異なる特徴を持った技術であり、すでに実用化が始まっています。特にMRに関しては今後の発展が大きく期待されており、今後は高いデジタル技術を持つさまざまな企業がMR市場に参入することが予測されています。
MRの活用シーン
MRの概要について知ったとしても、それが具体的にどういった場面で活躍するのかはイメージしづらい部分があります。MRが私たちのビジネスにもたらす影響とは一体どのようなものなのでしょうか?
教育現場への導入
MRの活躍が最も期待されているのが教育現場です。NASAでは宇宙飛行士の教育としてすでにMRを導入していることを公表していますし、JALはMicrosoftホロ・レンズを使用したパイロットと整備士の訓練プログラムを開発しています。
確かに、「MRと教育」というのは非常に相性のよい組み合わせかもしれません。前述したような職業では、実際の現場におけるOJTが非常に難しいという共通項があります。そのため、MRを使って現場に立っているような疑似体験をさせることで、言葉では伝えられない情報をダイレクトに伝達でき、教育プロセスを大幅に効率化できます。
また、教育される側も疑似体験とはいっても実際の現場に近い体験ができるので、緊張感を和らげながら本番に挑むことができ、効率的なスキル向上が期待できます。
建築現場への導入
常に危険と隣り合わせな建築現場では、安全管理面でMRが活躍すると期待されています。作業員の1人1人がMRを使った専用機器を装着することで、建築現場において危険度が高い場所を把握し、さらには安全確保のために装置を身に着け忘れた際に専用機器から警告を受けるなどの活用方法も考えられます。
建築現場では安全性の確保が生産性に繋がることが実証されているため、MRによって安全性を高めることで同時に生産性も向上されるでしょう。また、MR専用機器を通じてオペレーターと繋がることで、常に詳細情報を手にしながら建築に当たれるのも強みです。
営業現場への導入
大規模な製品や部品構成が複雑な製品は、クライアントからの理解を得るのに時間がかかり購買プロセスが長期化することが大きな課題です。このプロセスを短縮するのにMRが活用されるでしょう。MRを使えば、会議室にいても大規模製品を目の前にしたり、製品デモを実施したりすることができます。
クライアント意思決定者は360度好きな角度から製品を眺めて、細部を拡大して映し出したりすることで、具体的な検討が行えるよういなります。目の前で実機が動作しているように見えることもできるので、商談の場で大いに活躍するでしょう。
医療現場への導入
医療にもMRは有効です。たとえば経験的にまだ未熟な医師がオペにあたる際は、MR専用機器を通じて熟練医師のアドバイスを受けながらオペを進めることができます。これにより、手術の成功率は上がりますし、一方で医師のスキルアップも効率的に進みます。
また、MRを使って患者へのオペ説明にも活用できるでしょう。アニメーションなどを交えた分かりやすい説明による、患者の精神的負担を除いて万全な状態でオペに臨ませることができます。
組織全体への導入
組織全体にMRを活用すると、会議を効率化する効果があります。たとえばMicrosoftホロ・レンズはインターネットと接続し、Windows向けアプリも利用できることから、MRを通じたWeb会議が実施できます。
まるで相手がその場にいるかのような体験をしながら会議を進めることで、より効率的にコミュニケーションが取れます。また、空中に仮想ホワイトボードを設置して専用ペンを使って書き込み、それをそのままデータとして保存するといった技術も今後登場しそうです。
点検作業への導入(フィールドサービス)
製造業では点検作業への活躍が期待できます。実際に、東京電力とポケット・クリエイターズが共同開発した「QuantuMR」というアプリケーションは、MR専用機器を通じてオペレーターと情報を共有しながら点検作業にあたり、異常が見つかった際は修復作業について適切な指示を受けながら作業に当たるなどを実現しています。これ以外にも、橋梁における点検作業などあらゆる場面での活躍が期待されています。
こうしたMRの活用シーンを整理すると、ARとVRよりも今後のビジネスに与える影響が大きいということが分かります。そして、MRはすでに私たちのビジネスと共存しつつあり、今後はその活用の幅が大きく広がっていくことでしょう。ビジネスパーソンとしては、これらの技術がビジネスに与えるであろう影響を考えた上で、自社ビジネスにどうやって取り入れられるかを検討することが、商品やサービスに新しい付加価値を生み出すきっかけになるでしょう。
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