「AR」という言葉もすっかりビジネス用語として定着した感があります。今回は、AR技術の概要と、ARの種類、活用事例を紹介していきましょう。また、ARと類似の概念である「VR」「MR」についても説明し、ARとの違いについてもまとめています。
ARとは? -拡張現実の世界-
「AR(Augmented Reality、拡張現実)」とは、スマートフォンなどデバイスのカメラを通して見る現実の風景に、デジタル情報を重ねて表示する技術です。AR技術を使うと、スマートフォンなどデバイスの画面内に、動画や3Dキャラクターなどが、まるでその場に実際に存在しているかのように映し出されます。
この技術はまずエンターテインメント分野で活用され、2015年にリリースされた自撮り用アプリ「SNOW」や、大ヒットしたスマートフォン向けゲームの「ポケモンGO」などが代表的なアプリです。
VRとの違い
「AR」と類似の概念に「VR(Virtual Reality、仮想現実)」があります。VRはデジタル情報で作成された仮想世界に入り込んでいるかのように体感させる技術です。
一般的には、VRゴーグルやVRヘッドセットを装着して視覚・聴覚情報を得ることで、仮想世界を体験するというしくみになっています。
ARとVRには「本来は現実世界に存在しないものを、まるで存在しているかのように見たり感じたりできる」という共通点があります。ただし、現実世界に仮想世界を重ねるARと異なり、VRの世界は現実の世界から独立しており、現実世界と関連がないことが大きな違いです。
VR技術はアミューズメント施設「VR ZONE」や、家庭用ゲーム機「PlayStation VR」などで知られるようになりました。現在では人材育成や研修の場でも活用されています。
例えば世界的な会計事務所「PwC Japan」では、VRを利用して、不正会計が起こる現場について、「被監査会社の経理担当者」と「監査人」両方の目線で体感することができる「体験型学習」の導入を進めています。
MRとの違い
「MR(Mixed Reality、複合現実)」はARをさらに一歩進めた技術で、デバイスの内部ではなく、現実世界にデジタル情報を映し出す技術です。ARとの大きな違いは、MRの場合は現実世界と仮想世界がシームレスにやり取りできるという点です。
Microsoftは2019年に世界各地で行ったイベントでMRデバイス「HoloLens 2」のデモを行い、仮想世界に表示されたピアノを、実際に手で触れて演奏している様子を披露しています。
MR技術はエンタメや一部の業種における職業トレーニングで実用化が始まったばかりですが、建築現場で実物大の完成イメージを再現させたり、医療の場で手術部位を手元に再現表示したりする技術などの研究が進められており、今後の活用に大きな期待が寄せられています。
ARの種類
ARもいくつかのタイプに分類することができます。ここでは「現実世界のどの要素に対応させてARを出現させるか」という観点で3種類に分けて紹介します。
ロケーションベース型AR
GPSから取得した位置情報を基にしているARが「ロケーションベース(位置認識)型AR」です。これは、特定の地点にAR情報をあらかじめ設定しておき、その地点にいるユーザーに対してARコンテンツを表示させるしくみです。
このタイプの代表が「ポケモンGO」で、ポケモンGOの前身である位置情報ゲーム「Ingress」、場所に写真やメッセージを添えてほかのユーザーと共有できるアプリ「セカイカメラ」などもロケーションベース型です。位置情報に加え、地磁気センサーや加速度センサーを組み合わせて、さらに精密なARコンテンツを表示させることも可能です。この技術は「Google Map」などMAP系サービスや観光案内、ナビゲーションアプリなどに活用されています。
マーカー型ビジョンベースAR
「マーカー型ビジョンベースAR」は、特定の画像や写真に対してARコンテンツを表示させる技術です。特定の画像・写真を「マーカー」、つまりARコンテンツを表示させる「印」として設定しておくことで、コンテンツ表示を可能にするのです。
マーカー型はマーカーの種類によって「指定マーカー」と「フリーマーカー」に分けられます。
指定マーカー
指定マーカーは、QRコードのような定型画像をマーカーにするものです。狙った位置にコンテンツを表示しやすいことと、表示速度や安定性に優れているのが利点です。
フリーマーカー
自由な形の写真やイラストをマーカーとするものがフリーマーカーです。デザイン性を損なうことなくARを導入できるため、カタログやポスター、SNS上の写真などで好んで使われます。ただし、コンテンツの表示速度や安定性、位置精度は劣ります。
マーカーレス型ビジョンベースAR
「マーカーレス(空間認識)型ビジョンベースAR」は、カメラやセンサーなどを通して現実世界の奥行きや高さを取得し、それに合わせてARコンテンツを表示する技術です。周囲の情報を把握して表示するので、希望する位置にコンテンツを配置できます。その分、作成には高い技術力が必要です。
任意の場所にコンテンツを表示できるので、家具の配置シミュレーションなどに活用されています。
ARを使用したゲームやアプリの事例
ARを使用したゲームやアプリの代表的な5タイトルを紹介します。
ポケモンGO
「ポケモンGO」はロケーションベース型ARを活用した位置情報ゲームです。現実世界の街を歩きながらポケモンを捕獲したり、ほかのプレーヤーと対戦したりして楽しめます。ARモードでは、特定のタイミングでカメラを向けると、現実の景色と一体化したポケモンが、画面上に現れます。
日本では2016年7月にリリースされるとともに爆発的にヒットし、AR技術の認知度を高める役割を果たしました。2019年12月には、新AR機能の「相棒と冒険」が導入され、街歩き中も手持ちのポケモンを連れ歩くという楽しみ方もできるようになっています。
IKEA Place
IKEA家具と部屋とのマッチングを確認できるアプリです。室内でスマートフォンのカメラをかざすと、画面に映っている特定の箇所へ、CGの家具が配置されます。
ユーザーは、IKEAのカタログに掲載されている膨大な家具を、1つひとつ3DCGとして呼び出し、配置してみることができます。これにより、さまざまな家具について、実際に部屋へ置いてみた場合の雰囲気を確かめられるでしょう
同様のAR家具アプリに「LOWYA AR(ロウヤエーアール)」「RoomCo AR(ルムコエーアール)」「Amazon ARビュー」などがあります。
https://www.ikea.com/jp/ja/customer-service/mobile-apps/
ドラゴンクエストウォーク
国産RPGの代名詞とも言える「ドラゴンクエスト」シリーズをベースにした位置情報ゲームで、2019年9月にリリースされました。ほかの位置情報ゲーム同様に、現実の街を歩きながらクエストをこなしたりモンスターと戦闘したりしてプレイします。注目は「AR撮影」機能で、現実世界とモンスターをコラボした記念写真を撮影することができます。
https://www.dragonquest.jp/walk/
Snapchat
「Snapchat」は写真共有SNSアプリです。従来のカメラアプリと異なり、撮影すると自動的に加工された状態で写真が表示され、手軽にARコンテンツを楽しむことができます。また、送信した写真が短時間で消去される仕組みになっており、写りを気にせずにカジュアルな写真を交換し合うツールとして人気を博しています。
https://www.snapchat.com/l/ja-jp/download
Google Arts & Culture
世界中の名画データベースを記録したバーチャル美術館アプリ「Google Arts & Culture」。AR技術を利用して、目の前の現実世界に芸術作品を映し出す「Art Projector」という機能が実装されています。この機能は、デバイスにとらえた実際の風景に実物大の有名作品を表示させるもので、例えば、自分の部屋に名画を飾ったらどんな感じになるかデバイス内で確認することができます。
https://artsandculture.google.com/?hl=ja
ARの今後の市場と動向
今日では、ARに関する技術革新も進んでいます。ウェアラブルデバイスもゴーグル型のものに加え、新たにコンタクトレンズ型のデバイスが発表されています。GoogleやMicrosoftなど世界的な企業がAR・VR技術やデバイスの開発にしのぎを削っているのです。
こうしたデバイスの一般普及が期待されつつ、AR市場は急激な成長を見せています。世界では、教育や工事作業などに積極的にARは導入されています。日本でも、こうした市場の流れに乗るためには、エンターテイメント以外のさまざまな用途・分野へ、AR導入を進めていく必要があるでしょう。ぜひ、国内の一企業としても、AR技術の積極利用を検討してみてください。
まとめ
ARとは現実の風景にデジタル情報を重ね合わせて、新しい情報を加えて「拡張」する技術です。AR市場は、今後も新技術やデバイスの改良・進歩により、さらなる発展が予測されており、ビジネスシーンでの活用事例も増加していくと考えられます。
「ヒューマンセントリックス」ではBtoBにより、企業向け動画を毎月200タイトル以上製作しています。AR技術に関連するマニュアルなどを、動画として作成することも可能です。ぜひお気軽に、ヒューマンセントリックスへお問い合わせください。
- トピック:
- HowTo・マニュアル動画制作